たんぱく質=万能 ではないよ
テレビを見ていてもインターネットを見ていても、「たんぱく質」「プロテイン」という言葉をよく見かけるようになりました。
たんぱく質の重要性は多くの方に広まったのかな、と思う反面、どうしても言葉だけが一人歩きしているように思います。
たんぱく質に限らず栄養素はどれも大切で、それぞれに違うはたらきがあります。偏ってしまうと、かえって体に悪影響があることもあるんです。
以前はたんぱく質だけではなく、野菜も大事ですよ〜という記事を書きました。
しかし、上の記事でも書いたように大切なのはバランス。たんぱく質が不要というわけではありません。
ということで、この記事ではたんぱく質にフォーカス。たんぱく質を摂るときに気をつけたいこと、についてお話ししていきます。
脂質はひかえめに
基本的に食べものはたんぱく質だけを含んでいるわけではありません。(プロテインなどのサプリメントは除く)
糖質や脂質(油)、食物繊維、ビタミン・ミネラル、フィトケミカルなどなど…食べものはさまざまな栄養をまとめた、ひとつのパッケージになっているんです。
たとえば、当ブログで人気を集めるレンズ豆と、日本人に馴染み深い大豆の栄養成分を見比べてみましょう。
(ここからは kcal=キロカロリー、g=グラム と読んでください)
カロリー | 炭水化物 | たんぱく質 | 脂質 | |
---|---|---|---|---|
レンズ豆 | 313kcal | 60.7g | 23.2g | 1.5g |
大豆 | 372kcal | 29.5g | 33.8g | 19.7g |
どちらもマメ類ですが、栄養素の数値はどれも異なりますよね。特に脂質の数値はかなりの差があります。
このように「たんぱく質が多い食品」とひとくちに言っても、脂質や糖質もある程度含まれていることを知っておく必要があります。
特に気をつけたいのが脂質です。糖質・たんぱく質は4kcalなのに対し、脂質は1gで9kcalと2倍以上のカロリーがあります。
脂質を極端に減らすのはよくありませんが、摂りすぎには注意が必要です。
たんぱく質といえば大豆というイメージだけだと、すこーし不十分かもしれません。
豆腐・豆乳も意外と注意
牛乳はよくないけど、豆乳ならいいんでしょ?
目的によるかなあ…
ヘルシーなイメージのある豆乳。牛乳と比べれば健康的なことは確かです。
でも、たんぱく質を摂ることが目的で飲んでいるなら、脂質を取りすぎていないかの確認をしましょう。
カロリー | 炭水化物 | たんぱく質 | 脂質 | |
---|---|---|---|---|
無調整豆乳 | 86kcal | 4.6g | 7.2g | 5.6g |
牛乳 | 122kcal | 9.6g | 6.6g | 7.6g |
カロリーで見ればはっきりと牛乳よりも少ないですが、豆乳でも脂質はそこそこ入っていますよね。
たんぱく質と脂質のg量に大きな差がないため、カロリーで計算すると脂質の割合が高いといえます。
次はお豆腐も見てみましょうか。
カロリー | 炭水化物 | たんぱく質 | 脂質 | |
---|---|---|---|---|
木綿豆腐 | 73kcal | 1.5g | 7.0g | 4.9g |
絹ごし豆腐 | 56kcal | 2.0g | 5.3g | 3.5g |
豆乳も豆腐も、もとを辿ればどれも大豆ですからね。脂質はそこそこ入っているんだな〜ということを覚えておきましょう。
お肉や牛乳、卵の脂質と比べれば、大豆の脂質は間違いなくヘルシーです。ですが、
豆腐サラダはヘルシーだし、こってりしたドレッシングにしようかな
豆腐はたんぱく質だし、いっぱい食べても太らないでしょ!
このように考えていると、知らず知らずのうちに脂質の摂りすぎになってしまう可能性も。
菜食が健康に良いのは、あくまでバランスのいい食生活が土台にあっての話。
買い物に行ったときは、パッケージの栄養成分表示をチェックしてみてください。糖質、たんぱく質、脂質がそれぞれどれくらい入っているのか。食品への理解を深めていきましょう。
今回は大豆製品を取り上げましたが、パンとスイーツ・グラノーラとシリアルなど、いろいろな食べものを見比べてみると、新しい発見があるかもしれませんよ。
塩分は特に気をつけて!
脂質と同じくらい気をつけたいのが塩分。
大豆ミートや植物性チーズ、ヴィーガンソーセージなどが日本でも食べられるようになってきたことはうれしいですが、こういった加工食品には塩分が比較的多く含まれています。
菜食とは関係なく、もともと日本人は塩分摂取量が多いことが問題視されているんです。現在の平均摂取量は1日10gとのこと。
それに対し、厚生労働省が定める日本人の塩分摂取量の目標は以下の通りです。少なくとも2~3gの減塩が必要といえますね。
・男性 8.0g
・女性 7.0g
ちなみに世界保健機関(WHO)はもっと厳しく、5.0gという目標を掲げています。
とりあえず3食に分けるとして、1食につき1~2g、多くても3gくらいがちょうどいい塩分量です。
タレをつかった納豆1パックで0.6gくらいなので、あとお味噌汁を飲んだらほぼ終了、もしくはオーバーでしょうね…。日本人の食生活で塩分が多くなるのも頷けます。
加工食品は美味しいし便利なので、食べる機会も多いはず。よく食べる商品の塩分量を調べてみてください。
ドレッシングとかしょうゆとか、調味料のかけすぎも要注意!
人工甘味料に頼らない
塩分と比べ、まだまだ科学的根拠は少ないのが人工甘味料。
安全性を十分に検証された上で使われているので、はっきりと健康被害が出るようなことはもちろんありません。
とはいえ、腸内環境へ悪影響を与えているかも?というデータも多少出てきています。
安全性を検証するのも実験、悪影響を検証するのも実験…実験や研究にも限界はあります。良い悪いがはっきりと白黒つくとは限りません。
気にする余裕があるなら、これも摂りすぎには気をつけておきましょう。
僕個人の考えとしては、カロリーがないからといって人工甘味料を使ったゼリーやお菓子、ジュースを食べるのはおすすめできません。
カロリーの有無にかかわらず、結局は甘いものばかり食べることに変わりはないからです。
人工甘味料による強い甘みに慣れてしまうことで、味の濃いものや甘いものを食べたい欲求から抜け出せなくなる可能性は大いにあります。
ずーっとゼロカロリーのダイエット食品でごまかし続けるよりも、1週間のうち6日間はがんばって、残りの1日にご褒美で好きなスイーツを食べたほうがよっぽど健康的ですし、満足感も得られるはずです。
甘いものを食べるかわりにプロテインを飲んでいる人も注意してください。
栄養素だけを見れば甘いもの<プロテインかもしれませんが、栄養素よりも先に、常に甘いものを食べないと気が済まないような状況の改善が先です。
たんぱく質に偏っていないか
そもそもあなたはたんぱく質を摂りすぎてはいませんか?
塩分と同じく、たんぱく質にも目標の摂取量が定められています。
・男性 65g(18~64歳の場合)
・女性 50g(18~64歳の場合)
上記はあくまでめやすとなる量。体の大きさや運動量はそれぞれ違いますので、せっかく覚えるなら以下の計算式をおすすめします。
・1日の摂取カロリーのうち 13~20%
・体重(kg) x 0.8~1.2g
どちらにせよ、摂取するgの量で考えると大差はありません。
パーセンテージ計算だと以下のようになります。
1日1400kcalを摂取する女性の場合→45.5g~70g
(たんぱく質は1gにつき4kcalなので、カロリーを計算したあと4で割っています)
…1400kcalの13%=182kcal / 4 = 45.5g
…1400kcalの20%=280kcal / 4 = 70g
体重x0.8~1.2の場合の範囲はこんな感じです。
体重55kgの女性の場合→44g~66g
…55×0.8=44g
…55×1.2=66g
あまり大きな差はないですよね。そのため、ご自身の体重をもとに計算するのがいいと思います。
痩せたい・筋肉をつけたいなど、目標に向けて摂取カロリーを把握している場合にはパーセンテージが便利です。ふだんの食生活に生かすなら、グラム単位のほうが役立つと思います。
ダイエット中は筋肉が落ちやすいので、多めにとっておきましょう。もちろん筋肉をつけたい方も同様です。
そうはいっても多ければ多いほど良いわけではありませんので、ご注意を。
1日1400kcalって食べすぎじゃない…?と思った方へ
体の小さい方やストイック気味のダイエットをしていない限り、1400kcalはそこまで多い量ではありません。
1日の消費カロリーをざっくり計算できるサイトがありますので、ご自身の体格に合わせて計算してみるとよいでしょう。
TDEEの計算一日の総消費カロリーであるTDEEを計算します。keisan.casio.jp
参考までに、30歳の女性・155cm・50kg・ほぼ運動しない、で計算しても1512kcalは消費する計算です。
計算結果よりも食べてないのに太る…という場合、運動不足すぎて代謝が落ちていたり、実際は思った以上に食べている、などの可能性が考えられます。
たんぱく質以外にも目を向けて
以上、たんぱく質を摂るときに気をつけたいことを解説しました。
・脂質と塩分はひかえめに
・人工甘味料に頼らない
・たんぱく質に偏った食事をしない
プロテインバーやプロテインドリンクを取り入れようと思ったときは、特に人工甘味料とたんぱく質の偏りに注意してください。
そもそも、たんぱく質だけをどうにかしようという考えが間違っている可能性もあります。
ごはん+おかず+副菜というバランスのいい基本的な食事の型を、1週間のなかで1回でも多く成り立たせる方法を考えるのが先です。
菜食で栄養バランスを整えるコツや、菜食のたんぱく質についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてどうぞ。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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参考文献
Craig WJ, Mangels AR; American Dietetic Association. Position of the American Dietetic Association: vegetarian diets. J Am Diet Assoc. 2009 Jul;109(7):1266-82. doi: 10.1016/j.jada.2009.05.027. PMID: 19562864.